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謎/「ターミネーター4」

やー、おどろいた、おどろいた!

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始まって1分もしないうちに、トイレに立っちゃったおじさんがいた!

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我慢できなかったんでしょう。

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まだ、最初のうちだからいいやと思ったのかな?

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おじさん、
あんたは、たいへんな損をした!

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この映画、最初の5分を見逃しちゃうと、後半の「核心」とも言えるシーンの意味が、つかめないでありましょう。

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「ターミネーター4」です。

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2018年、「審判の日」を過ぎた世界。

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機械対人類の戦争は、ジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)の数々の苦闘にも関わらず、ついに現実のものとなる。

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だが、その前に…

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日付戻って、始まりは、とある死刑囚監房から。

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戦争の起きるずっと以前…

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死刑囚マーカス・ライト(サム・ワーシントン)。

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刑の執行直前に、彼のもとを訪れる博士が(ヘレナ・ボナム・カーター)ひとり…。

(ところで、なんで「ワー」シントンなんだ、「ワ」シントンでいいじゃないか、と思ってましたが、
「Wathington」じゃなくて
「Worthington」なんですね。
外国語って、つくづくわかんないことだらけだわ)

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この映画、宣伝では、クリスチャン・ベイルのほうをメインに押し出しておりますが、実際観ると、この死刑囚マーカス・ライトを巡る物語のほうが、内容の半分強を占めております。

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物語。

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そう。
きょうは「物語」と「謎」についてのお話しです。

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ターミネーター1作目を、思い出してくんなまし。

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あの映画で、シュワルツェネッガーが果たした役割とは、どんなものだったでしょうか?

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設定上は、「謎の男」でありました。

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ところが、ですね、

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いきなり深夜のロサンゼルスに、雷鳴と共に素っ裸で現れて、ただ服を奪うためだけに、チンピラのあんちゃんをぶっ殺しちゃう…というやり口に始まって、

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その「行動」には、一片の謎もなかったのです。

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シュワちゃんの存在というのは、ひとが「生きている」、ということを力ずくでぶち破る、一種の「革命」でありました。

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シュワちゃんでない普通のひとの、いやさ僕らの人生というものは、普通は謎だらけのはずですね?

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いま現在の自分の境遇というものが、どういう経緯で出来上がり、

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なぜ、世の中のどういう事情と、つながることになったのか、

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完璧に予測できた方は、おられるでしょか?

(あ、ひょっとして「つながりはない」なんて言う方います?

そんなことは、ありえません。人間は社会的な生き物です。僕らの誰にも、きっと、気付かない世の中とのつながりがある)

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ところで、今から言う「謎」とは「わけのわからないもの」のことではありません。

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これから言う「謎」とは――その本当の奥底にたどり着くなら、という条件付きで――僕たちを日常から生き返らせ、歓ばせてくれるはずのものです。

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「謎」とは、物事の奥の、その奥深くに秘められた、(いきなり言ってしまうなら)「たましい」のようなものに触れるときの「言葉の作用」を指しています。

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それは、奥の奥深くに在るものなので、充分以上に練りに練った文章(思考)で「降りていく」か、

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または、トンデモナイ破壊力で「中途の過程」をぶち破って到達するか、しない限り、探りあてられるものではありません。

(よいこなら、どちらもやめておきましょう。狂いますよ)

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僕らは日々の暮らしの中に埋もれないため、芸能と呼ばれる文化を作り、少しでも自然な人間らしさの回復を図る生き物です。

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芸能の中でも、おおざっぱに言いますと、周縁部にとどまって、「この奥に、ひとの命の宝の秘密が隠されていますよ」ということをうっすら撫でて終わるものと、

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過剰なほどの言葉の渦を巻き起こすか、または、問答無用に言葉の厚い壁を破壊して「核心に迫っていく」ものと、

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大別して、ふたつのタイプがございます。

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どちらがいい悪いではありません。

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うっすらと知らされるだけで、充分、心の快復につながるひとが、ほとんどなのです。

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「ドリトル先生」を書いたロフティングは、それを「安全な冒険」と呼びました。

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彼は若干の皮肉を込めてそう書いたのですが、繰り返しますが「撫でている」ものを選ぶのは、悪いことではありません。

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様々な言葉の仕掛け(レトリック)を通じて「謎」への旅を導こうとするものを、僕らは例えば「物語」などと呼んで、愛します。

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多くの場合、謎は物語に輝きを与えるための「便法」として用いられ、

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複雑巧緻な「ストーリーテリング」の一部分となって、役を終えます。

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これだけでも、ひとは、カタルシスを味わうのです。

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ですが、たまに、

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撫でてもらう程度では、命の宝に触れられないことを、激しくもどかしく思うひとがいる。

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そういうひとは、やがて、強く求めるようになるでしょう。

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命の宝の秘密が発する、あまりにもまばゆい光に直接さわろうとすることを。

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そのひとは、自分で何か、作ってしまうかもしれません。

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「芸能人」と呼ばれる人になるかもしれない。

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で、

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ここからが、きょうの謎の核心です。

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ジェームズ・キャメロンの「ターミネーター」やスピルバーグの「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」は、今まで述べてきたような「物語」の範疇をはみ出して、

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「謎」に直接触れようとする挑戦だった、ということです。

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スピルバーグという人は、「インディ」の前にしろ後にしろ、ひたすら「謎」を問い詰めるような作品ばかり作っているようですが、

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そういうひとは、本当に、ほんのひと握りしかいないのです。

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キャメロンにしてからが、「ターミネーター」以外には、あれほど強烈に「謎」に迫る映画は、撮っていないかもしれません。

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で、

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この「ターミネーター4」ですが…

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うーん…

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これは、もう、謎の萌芽すら残ってないな…

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1作目が打ち立てた、瞠目の「謎だらけ、謎また謎」の、あたかもパンク・ロックの響きのような凄まじさは、もはや、ここにはありません。

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カネじゃないんだな、カネじゃ…

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どれだけ製作費をかけようと、パンクは出来るものじゃないんだな…

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いや、物語は、すごくよく出来てます。

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しかし1作目に仰天した僕らとしては、謎が「溶けてしまった」(おっと、これは2作目のお話しですね。
そう、あの溶鉱炉に落ちていったT-1000のように)そのあとの手練手管を見せられても、

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ふむ。
頑張ってるね。

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と、どこか「上から目線」で腕組みしたくなる想いを抑えることが出来ません。

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「物語」は、命の宝の秘密を捉える「謎」から、その周縁部に発生し、さらにそこから派生的な物語が生まれ…

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という具合に理に落ちる解釈が正しいかどうか、分かりませんが、これでカタルシスを味わう人は、

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たぶん、「謎」からは遠く離れて、平穏さの中に安らぎを見てきた人だ、と。

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そう断言しちゃおうかな、今回は。

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いい物語が出来ているので、ストーリーテラーとしてのマックG監督がわくわくしながら撮ったらしい様子は、それ自体は、ひとごとながら、喜ばしいものですよ。はい。

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Jack

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(物語の出来は素晴らしいので、たぶん監督はじめ制作陣は、いまいち興収が伸びないのをいぶかっていることでしょう)

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