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照れずに愛して/「僕らのミライへ逆回転」

米国ジャズの歴史に燦然と輝く巨人、ファッツ・ウォーラー。

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ファッツ・ウォーラーは、アメリカのどの町の、どの家で産まれたか?

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僕も知りません。

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いや、ネットで調べれば、事実は、簡単に判明しますが、ちょっとお待ちくださいませ。

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一辺の事実よりも、素敵な物語が、見つかります。

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「僕らのミライへ逆回転」

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観たかったんですよ、これ。

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都合で劇場には行けず、レンタル借りようと思いながら、延び延びになってました。

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原題は、「Be Kind Rewind」、つまり、

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「優しく巻き戻して」

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というところでしょうか。

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いや、これも実際には、アメリカのレンタルビデオ(テープ)店で普通に使われていた決まり文句、「巻き戻して返してください」の意らしいんですが、そこに、ひとつの「家庭に入り込んだ映画文化」に対するメッセージ性が、読み込んであります。

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このような、タイトルを付けるときのデリケートさが、いかにも脚本・監督ミシェル・ゴンドリーのしるしです。

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「エターナル・サンシャイン」を観て以来、この人のことが、とても気になっていたので、この映画も、観るのを楽しみにしてました。

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このゴンドリーという人の作風というやつは、ちょっと

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「屁理屈」

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こねて、楽しんでるようなところだと思うんですね。

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「屁理屈」と「理屈」が、どう違うかは、ずばり、作品を見れば、解ります。

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レンタルビデオ店「Be Kind Rewind(ていねいに巻き戻してね)」。

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古くからある店なんです。
VHSしか、置いてません。

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店主のフレッチャー(ダニー・グローバー)は、ファッツ・ウォーラーの心酔者。

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ちょっと事情がありまして、ファッツ没後60周年の記念イベントを見に行く、とだけ言って、店を空けます。

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店番を任された、店員のマイク(モス・デフ)。

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マイクの友だちで廃品のリサイクル屋ジェリー(ジャック・ブラック)。

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発電所の前にトレーラーハウスを置いて、住んでます。

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このジェリーの存在が、騒動の始まりでした。

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ヘンなことを言うヤツでして、

「FBIが、発電所の電磁波を使って、市民を洗脳してるんだ!」

この俺も洗脳されそうだから、発電所をぶっとばそう!

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本当に忍び込んだジェリーは、ぶっとばすどころか、逆に、強力な電磁波を浴びてしまい…

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そのまま店に来るもんだから、電磁波のせいで、

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VHSテープの録画が、ぜんぶ、消えちゃう!

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さぁ、たいへん。

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ビデオを借りにくる客に、テープを出さないわけにはいかない。

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いっそのこと、

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俺らで、中身を作っちまえ!

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ふたりは、即席のビデオ監督兼出演者になりますが…

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ふーむ…。

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期待にたがわず、素晴らしいじゃないの!

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傑作です。
文句なしです!

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「スウェーデンの輸入ものだ」っていうセリフ、

ひじょーに、おかしい。

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全編、くすくす笑いの連続です。

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そこかしこで挿入されるエピソードが、どれも実にほほえましく、そして、楽しい。

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重要なことは、これは、パロディ劇ではないのです。

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もっと、ひねりがきいてます。

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劇中でふたりが「リメイク」する映画、どのくらい観てますか?

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「ゴーストバスターズ」に始まり、
「ラッシュアワー2」、
「ロボコップ」
「2001年宇宙の旅」、
「キングコング」、
「シェルブールの雨傘」、
「ボーイズ'ン・ザ・フッド」、
「ドクター・モローの島」、
「ブギーナイツ」、
「ラスト・タンゴ・イン・パリ」…

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玉石とりまぜて、ふんだんに。

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極めつけは
「ライオン・キング」の撮影シーン!

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加えてボカ、この監督さんの「俳優の選び方」にも、興味がある。

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主演の三人はもちろん、

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ひょんなことから、マイクとジェリーのリメイク騒動に参加するアルマ(メロニー・ディアス)。

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いかにも、こういうお店の常連客っぽい、ミア・ファロウ。

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さらに、あの超有名大作映画のあの女優を、こんな役で出演させて!

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「俳優選びに凝る」

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というのは、各シーンの撮り方に凝りたいから、だと思うんですが、

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観ていると、キスのやり取りが出てくるんですけども、その場面の、なんとデリケートで辛辣で、屈折したこと!

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「ひねってる」とか「デリケート」とか、「屁理屈」とか、いろいろ言ってみましたが、全体としてこれは、

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ハリウッドの大作志向への、ひじょーに繊細な、チクリとした批判にもなっています。

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コーエン兄弟のような、ふてくされた気取りは、ボカ、すっかり嫌いになりましたけど、こういう洒落っ気たっぷりのご意見なら、単純にのけぞります。やるじゃないの。

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「映画愛」と、ひとくちに言いますが、それって、なんのことでしょう。

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素直に言うならこの映画、

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「映画愛についての映画」

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と、言える。

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そこを素直に言わないのが、

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「屁理屈」の「屁理屈」たる、由縁です。

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「屁理屈」とは、つまり、

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「愛が高じて、変形されてしまった理屈」

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の、ことです。

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いったいに、自分が

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「映画ファンである」

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ということは、
照れて言うようなことでしょか?

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「映画ファンです」ということを照れて言うようになったなら、

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それは、じゅーだいなサインです。

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あなたは、なんと、愛ゆえに、

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「作者になりたい」

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と、思いはじめているのです。

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「映画愛が高じて、やがて映画制作に取り組むようになる人たち」の情熱を、こんなにも豊かな想像力と説得力で、親しみやすく示した例も珍しい。

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「エターナル・サンシャイン」もそうでしたが、この映画も、

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「あれぇ…このまま、切なくエンドマーク?…」

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と、思わせておいて、終わり方、うまぁーーーい!!

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いかにも、

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「“愛”なんて、照れくさくって」

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と、言いそうなひとたちのエンディング。

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照れずに拍手したくなりますから、楽しみにご覧あれ。

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Jack

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(さんざん、いろんな話題で楽しませてから、このラストですから、しびれますよ、ほんとにもう)

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