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終わりの始まり?/「ハンコック」

プロモーションのときのインタビューで、ウィル・スミスが

「彼は、興味深い人物だ」

って答えてましたけど、たしかにそうですね。

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「ハンコック」です。

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ハンコック(スミス)。

いつの頃からか、ヒーロー。

ハンコック。

いつまで経っても、壊し屋の騒動屋。

何か凶悪事件が起きるたびに、やむなく彼は「出動」します。

しかし、その行動たるや、周囲に甚大な被害を与える。

道路や建物は壊す。
クルマは炎上させる。
しっちゃかめっちゃか。

「良いこと」をしてるはずなのに、文句を言われる。
いつも、バッシングの嵐。

そんな彼ですから、あまりに凄まじい強さを持てあまし、生きることに、なんの希望も見い出せず、半ば浮浪者のように酒浸りの毎日です。

だが、男の、運命を変える日はやって来る。

今回助けたのが、企業コンサルタントのPRマン(ジェイソン・ベイトマン)でした。

彼は「大衆に愛されるヒーローを目指せ」と、ハンコックを説得にかかるのですが…

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この映画、特に前半部の、どこかトボケた調子が面白い。

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「24」や「HEROES」のような、「献身的自己犠牲」で世界を救おうとする態度を、茶化しているところがある。

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それにしても、これほどヒネリを加えてまで、彼の国が「ヒーローもの」にこだわるのは、なぜなんでしょう。

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スーパーヒーロー。

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我が国では、円谷英二さんの「特撮もの」に対する取り組み方の影響も大きく手伝って、「ウルトラマン」などがどんなにウケても、それは、「子どものためのもの」に留まった、

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そうして、今もそうなんですが、あちら米国では、大きく事情が異なります。

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「ターミネーター2」や「プレデター」のシュワルツェネッガー、

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「マトリックス」シリーズのキアヌ・リーブス。

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「スパイダーマン」シリーズのトビー・マグワイア。

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どれも、中心となる客層は中学生から大学生くらいじゃないでしょか。

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そうして決定的なのは、「ダークナイト」です。
あれ、完全に大人向けです。

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こうした「超人」たちの活躍する延長線上に、今度は、「生身の」ヒーローものがある。

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「ダイ・ハード」シリーズのブルース・ウィリス。

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「リーサル・ウェポン」シリーズのメル・ギブソン。

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さらにさかのぼって、ジョン・ウェインなんかを考えても、いいでしょう。

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ヒーローについて、ちょっと「分解」してみましょう。

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「四の五の言わせない存在」

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これが「ヒーロー」なんですね。

「ひとりクーデター」と言いますか、議論百出、いろんな野次馬がごった返して、「当事者」たちが、どうにも身動きが取れずにいるところへ、ズダン!と現れて、チャチャっと問題解決して、用が済んだらスパッと帰る。

硬直した「民主主義」を、ある意味、ぶち破る存在である、と申せます。

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思えば、特に70年代というのが「ヒーロー不在」の時代でありました。

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78年にクリストファー・リーヴ主演の「スーパーマン」が公開されて、大ヒットを飛ばすんですけど、あんまり出来のいい映画じゃありません。

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「スターウォーズ」公開後のSFブームに乗っかろうとしただけの、言ってしまえばキワモノで、たぶん映画史には残らないだろうと思う。

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当時のアメリカというと、75年に、膨大な軍事予算を積んでも勝てなかったベトナム戦争が、「敗退」で終わりを見ます。

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歴史的に考えるなら、この頃、「なんで、マルクス主義じゃいけないの?」っていう、単純明快な問いかけに、「アメリカという世界」は、答えられなくなっていた。

そう言えるんではないでしょか。

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マイケル・ジャクソンやエディ・マーフィーといった「新しい人気者」が(マイケルは子どもの頃からだけど、エディ・マーフィーは間違いなく、ニュー・スターだった。シドニー・ポワチエなんかとははっきり違う、新時代の担い手でした)、80年代に入って、ベトナム後の嫌な空気を打ち払い、米国は、次第に「ヒーローが、いつ現れてもいい」準備が整っていくことになる。

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「スーパーヒーロー」の映画を見る多くの人がティーンエイジだとすると(だと思います)、お客さんである彼らの気分は、容易に想像がつくと思います。

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「ごちゃごちゃうるせーなー、勝手にさせてくれよ」っていうものです。

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この気分が、今の米国全体を包んでいるとしたら、どうでしょう?

ごちゃごちゃうるせーなー、勝手にさせてくれよ。

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9.11以後の米国は、再び「ヒーロー待望、しかし、なかなかスッキリと創れない」っていう時代に入った。

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バットマンよりジョーカーのほうが、「時代を操っている」かに見える。

このままじゃいけません(アメリカにとっては、ね)。

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「次の時代」が、どんな世の中になるかは別にして、「ハンコック」というのは、この混迷の世界を上手いこと「切り取った」と言えるでしょう。

ごちゃごちゃうるせーなー、勝手にさせてくれよ。

「四の五の言わせない」ひとりクーデターのような人物を輩出しながら、「アメリカという世界」は「本当の世界」に向き合ってきたわけで、それが彼の国の基本的な態度なのだと思います。

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そのような態度を保ちながら、彼の国は、「硬直化していく国内」を、ときどきリフレッシュさせている。

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民主主義というのは、本来「ひとり勝ち」は出来ない制度のはずですが、ごちゃごちゃうるせーなー、勝手にさせてくれよ、の人たちにとって、民主主義というのは「大事なものでありながら、やっかいなもの」でもある。

自分たちが周りから浮き上がっちゃうからですね。

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僕の知り合いのご老人で、昔、十代の頃、共産党のシンパだった人がいます。

官権の目をかいくぐり、レポ活動に精を出し、一生懸命世の中を「平等な良い世の中」に変えようとして、ある日、逮捕されました。

で、戦後になって解放されて、東京へ出てきてみたら、呆れたことがあった、って言うんですよ。

「愛される共産党」

ポスターにそう書いてあったそうなんです。

あー、こりゃだめだ、終わったな…

そう思ったそうなんですが、

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さて、愛されるヒーローに変わろうとするハンコック。

この映画は、なにかの「終わり」のシンボライズなんでしょか。

それともなにかの始まりの…

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(シャーリーズ・セロンが出てるんですけどね。とっても巧い起用の仕方だと思ったです)

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Jack

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