道化師の怒り/「ダークナイト」
「誰かおいらのことを宇宙人小僧だと言うよ
変わり者だからね
あまりにモテちゃって「女心の盗人」だとさ
おとこ妾とも言われたな
巷じゃ、おいらの噂をしてる
生き方を間違うな、生き方を直せとさ
待ちなよ、平気さ、心配するなィ
大筋で世間並みに生きてるさ
ただ俺は なんでも口を挟んじゃあ馬鹿笑い
始終恋仇でいたずら者さ
お日サマの下じゃ軽口ばかり
夜っぴて遊び呆けてる」
:スティーブ・ミラー・バンド 「The Joker」
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「ジョーカー」の語源には、「道化師」の意味合いもあるらしい。
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現代でも「ジョーカー」と言えば、ですね、おおむね、こうした「お調子者」のイメージが入っている、と思います。で、
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こういうことを念頭に置いていただいて、
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ジャック・ニコルソンは、どうして「ジョーカー」を演じてみたい、と思ったか。
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そうです。
初代「バットマン」の話です。
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「バットマン」の原作者ボブ・ケインの考えた、このキャラクター自体が、たいへんに魅力的です。
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「道化師」と言えば、シェイクスピアなんかでは、通常、王のそばに居て、王の政治やその発言のいちいちを「からかう」役回りを「わざわざ与えられている」人です。
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誰も文句の付けようがない人に対して、舌鋒鋭く、その慢心や愚かさを暴いてみせる。
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王の取り巻きの貴族たちからは、馬鹿にされ、変人、小者扱いされる道化師ですが、実は、専制君主の政治にとって、重要な役を果たしている。
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その「道化師」が、単なる「陽気な批評家」であることを辞めて、だれきった社会への「反体制派」に成り得る、というのは、原作が書いていることなのか、映画のオリジナルなアイデアなのか。
Wikipediaによると、原作が次第に過激化していって、今のジョーカーの設定になったようですが。
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いずれにせよ、ニコルソンが演じたジョーカーは、どこか哀しみもたたえた、「悪ふざけの度が過ぎる」仇役でありました。
(植木等さんや志村けんさんは、「反体制派」と言えるのか。ちょっと興味深い問題の立て方だと思います)
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「ダークナイト」
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犯罪の絶えない乱れた街ゴッサム・シティに、「光の騎士(ホワイトナイト)」が登場します。
新任の検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)。
ゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)とバットマン(クリスチャン・ベール)の協力で、マフィアの大量逮捕と、悪の資金源を絶つことに成功したデント検事は、さらなる街の浄化を市民に対して約束する。
バットマン = ブルース・ウェインは、熱血漢デント検事に感銘を受け、バットマンの活動から身を引くことさえ考える。
それは、いま現在デントの恋人になっているレイチェル(マギー・ギレンホール)の心を取り戻すためでもあります。
ブルースは本当にバットマンを辞めることが出来るのか。
一方、その頃、追い詰められたマフィアたちの前に現れたのが、ジョーカー(ヒース・レジャー)でした。
「バットマンさえ殺せばいい。そうすれば、街は再び手に入る」
彼は何を企んでいるのか?
資金の半分を差し出すように、マフィアたちに、提案しますが…
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この映画、編集が見事です。
オープニングの銀行強盗のシーンから、ラストの暗闇の疾駆に至るまで。
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延々と素早いカットバックの連続で(別々に撮影した異なる場面を、交互に織り混ぜて上映する方法。特にそのシークエンスにスピード感が欲しいとき、活きてくる)、ぐいぐい引き込む。
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あまりにもスピーディーなので、注視し続けていて、ヘトヘトに疲れました。
いや、すげぇ。
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話題となっているヒース・レジャーの演技については、僕もやられましたです。巧い。いい。
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ニコルソンのジョーカーは、どちらかと言うと、派手な衣装を来たり、終始引きつった笑い声を上げたり、それと、あれですね、ニコルソンは、たぶんですけど、ちょっとゲイの人っぽく演じてました。
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レジャーのほうには、なんと言うか、マッチョとは違う「男らしさ」を感じたなぁ。
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黒を基調にした衣装も、半ばドロドロのメイクも、オリジナリティに溢れてる。
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バットマン役のクリスチャン・ベールが、どっちかと言うと「セクシーな男」ですから、お互いのガチンコ勝負は、マイケル・キートンとニコルソンのときよりも、「男の闘い」として、見応えがあります。
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あの、こういうとき、不思議なんですけど、自分が普段、「俺はマッチョじゃないよ」と思ってても、なんか惹き込まれていくもののようです。
僕は格闘技に、あんまり明るくない人なんですが、もしかしてコーフンしていく様は、似たようなものかもしんない。
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ジャック・ニコルソンに対して、レジャーの演じたジョーカーの、もうひとつの重要な相違点を挙げるなら、ニコルソンがティム・バートンの演出もあって、どこか「恨みがましい」悲しいやつだったのに対し、レジャーのほうは、「怒り」が基本のトーンになっております。
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世の中の上っ面だけの安穏とした平静気分に天誅を加えてやる!
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表面ばかり取りつくろう紳士淑女の、本当の姿を暴いてやる!
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「道化師」が、実は激しい怒りの持ち主でもある、ということは、日本では、たぶん、ビートたけしさんが出てくるまで、それほど世の中には、知られてなかったことじゃないかと思うんですが、米国では、どうなんだろう。
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反体制派のお笑い人で、レニー・ブルースなんていたっけなぁ(60年代に活躍した、スタンダップ・コメディアン。66年死亡)。
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毎度のように言ってますが、怒りであれ、狂気のような笑いであれ、そういうことを表現する人が「道化師」としてもてはやされるということは、そういう社会が、どこか「鬱憤」を溜めている、ということのはずですから、あんまり良いサインじゃありません。
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「ダークナイト」に付けたくなる唯一の「難癖」、「重苦しい!」ということが、現実の社会の素直な反映でなければいいな、と思って、今回は終わります。
(レジャーの、この映画での演技には(荒唐無稽な役柄のはずなのに)、強いリアリティがあると思う。ニコルソンの笑顔が、「そういう顔しかできない」宿命のような哀歓をたたえていたのに対し、わざとらしい下手くそなメイクで素顔を隠してるところも、内側からふつふつと沸いてくる「怒り」の体現として、僕は受け止めましたです。それが「現代だ」って言い切っちゃうと、ややアンタンとしてまいりますけど)
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Jack
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