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門前の小僧は電気羊の夢を見ないのか?/「ジャンパー」

あと1週間ほどでDVDレンタル解禁になるので、この映画を。

…と、まずはその前に、ある小説の冒頭を。

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「まさに黄金時代だった。雄渾な冒険が試みられ、生きとし生けるものが生を謳歌し、死ぬことのむずかしい時代だった……しかし、誰ひとりそんなことをかんがえてはいなかった。これこそ、富と窃盗、収奪と劫略、文化と悪徳の未来の実現だった……しかし、誰ひとりそのことを認めてはいなかった。いっさいが極端にはしる時代であり、奇矯なものにとって魅惑的な時代だった……しかしそれを愛するものとてなかった時代なのである。」

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いったいなんのことを言ってるのか、解りますか。

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この「テンションの異常な高さ」を分かってくれないと、話が先に進まない。1956年の高揚した時代感が伝わってくる文章です。舞台は二十四世紀。

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「ジョウントという名前の学者が、ふとしたあやまりから自分の長椅子で火につつまれ、救急消火員に救援をもとめて叫び声をあげた。ところがどうしたことか、そのときのジョウントは消火係のすぐ傍に立っていた。(中略)
みんなはジョウントの危急を救ってから、彼が瞬間的に七十フィートもうごいた理由と原因の調査にかかった。精神感応移動(テレポーテイション)――」

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そして世界は激変する。

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この技術の開発により、誰もが一瞬のうちに空間を移動できるようになる。そうなった未来を描く、というのが、アルフレッド・ベスターの大傑作SF「虎よ、虎よ!」のあらましです(中田耕治訳:早川文庫)。

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「ジャンパー」です。こういう話しは、まかしてください。テレポーテイションの経験はありませんが、わたくし、テレパシーの経験なら、いくらでもあります(冗談じゃありませんが、あくまで過去の話しですよ)。さらに、この手のSFのマニアと呼んでくださいませ。

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ミシガンの学校に通う高校生デヴィッド(ヘイデン・クリステンセン)は、ある日突然、テレポートが出来るようになる。

あなたなら、どうするか。

ウェルズの描いた「透明人間」は、入っちゃいけないところへ、こっそりと出入りする。

デヴィッドも同じです。何処へでも行ける能力を利用して、彼は人生の自由を得る(人生の自由だよ)。
だが、享楽の生活も長くは続かなかった。
謎の男(サミュエル・L・ジャクソン)が登場し、彼は理由もなく(理由もなく?)命を狙われる羽目になり…

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yahoo!のユーザー・レビューを見てたら、「主人公の身勝手さに共感できない」っていう物凄い倫理的なご意見を目にして、ビックリしまして。あちゃ。

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言うか、そういうことを。

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元々「SF」という分野が華ひらいたのは、現実社会の縛りを離れて「自由にものを考えよう」とする、言ってしまえばダダイスムやシュルレアリスムと同じような志向を持つ「対抗文化」の性質を発揮したからでありまして、当然のことながら、そこに描かれる登場人物たちの多くが、いわゆる「普通の倫理規範」には縛られません。そうでなかったら「思考実験」になりません。小説だから出来ること、映画だから出来ることをやるんだよ。

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ベスターの本が書かれてから52年経っている。

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こんなことは「当たり前の前提」になっているかと思ったら、そうではないんだな。ジャック・スパロウには拍手しても、人は身近な現代劇で勝手気ままに振る舞う人間がいると、許さなかったりするんだな。ほんでもってジャック・バウアーのように「身勝手さの代償として、この人は孤独なんだ」っていう設定を求めたりするんだな。しかもそれが「正義の為」だったりするんだから…何をか言わんやです。やれやれ。

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「誰も見てない所で、こっそりと“何か”する」っていう体験を経てない人は希(まれ)だと思うんですが、おまえは「格差社会の小僧(小娘)、習わぬピューリタンと化す」のか、どうなんだ、え?

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おまえは「今という時代」に充足してるのか、どうなんだ、え?

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「ぶち破りたい」と思ってないのか、え?

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思ってないんでしょうねぇ…

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ダグ・リーマン監督の作品歴を見ると、現トム・クルーズ夫人ケイティ・ホームズも出てた思春期犯罪劇「go」、
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マット・デイモン主演で、原作になかった「若さの悲壮感」を上手く強めた「ボーン・アイデンティティー」、
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ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリーを迎えて、殺し屋夫婦の痴話喧嘩を派手に描いた「Mr.&Mrs.スミス」。
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上手いんですけど、難癖をつけるとすれば、「クール過ぎる」と言いますか、J.J.エイブラムズ(TVシリーズ「エイリアスの女」や「トム・クルーズの「MI3」(「クローバーフィールド」は、まだ見てません))のようなメロドラマ性に欠けます。主役のヘイデン・クリステンセンも(若きダース・ベイダー役でお馴染みですね)少し暗めの表情で、愛嬌に欠けるところがある。

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それでも、「そういう演出」で「そういう主役」で撮っちゃうところに「ちょっとした作家性」を感じます。大ヒットはしない感性だな。「一部の人を面白がらせる」のに留まるだろうな。それは欠点ではなく、インディーズ出身のダグ・リーマンが、対抗文化の世界観を見失っていない証左です。

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話し変わりますけど、Internet。

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Internetの困ったところは、ですね、

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まさしくジャンパーの如く、自由自在に世界を横断出来るかのように錯覚させるところでして、あほんだら、あれは、設定して選択してバラまいてる側があるんだ、まぬけ(って、ん? 誰に言ってんの?)。

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僕には、Internet隆盛の今は、ベスターの描いた超未来の素朴な矮小化に見えたりします。どことは言いませんが、あのアジアの新興国なんて、典型的にそうじゃない(あー、別に嫌って言ってるわけではありませんよ。(面倒くさいな、こういう注釈))。いや、

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待て、待て。そう捨てたもんでもないかもな。

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テキスト、画像、音声、動画…と、どんどん伝えられる内容が進化して、やがて嗅覚や触覚まで伝達できるようになるだろう。全感覚的にジャンプしあえる日まで、そんなに遠いことでもあるまい。
たぶん、あと5、60年しないうちに…

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窮屈なInternetの世界とも、おさらばだ。
不老薬でも開発されてたら、俺もジャンパーの気分が味わえるかな。

(おー、しちゃったよ。預言だ預言)

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Jack

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